雷電カンヌキ IPA

ゲストビールが変わりました。
「雷電 閂(カンヌキ) IPA」という名前からしてインパクトがあるビール。
最初僕は勘違いしていたのですが、雷電は戦闘機の名前ではなく、江戸時代に活躍した力士の名前だそうです。
そして閂というのは、その雷電さんの得意技。
あまりに強かったので禁じ手になったとか。
なんなら閂だけでなく、全部で4つの技の使用を禁じられていたそうです。
どんだけ強いんだ雷電さん。

最後のIPAというのはインディアン・ペール・エールの略です。
ペールエールというのはヨーロッパで昔から飲まれていたビールのスタイルの名前でして、色が赤茶色っぽく香り豊か、そして優しい甘みもあります。
日本で昔からよく飲まれているビールは「ピルスナー」というスタイルなのですが、味の印象はかなり異なります。
日本のビール大手会社のメインはやはりこちらなのでペールエールのスタイルは海外ビールが主体でしたが、地ビールの質の向上と共に人気が上がってきたので、いまでは国産のペールエールも様々な場所で飲めます。

さて、そんなペールエールですがこの雷電には「インディアン」の文字が加わってます。
これはペールエールの中でもまた特殊な部類に入るスタイルであることを指しています。
「インディアン」とは国の「インド」を意味しています。
インドがイギリス領であった際に行われていた貿易、それは物資を船でイギリスとインドの両国間を行き来して運んでいました。
イギリスからインドへ船で行くためにはまずひたすら南下をし、アフリカ大陸をぐるっと回る必要があります。
そして北上してインドへ。
とても長い道のりであり、船だからこそかなりの時間を必要とします。
また、この航路では赤道を2回またぐ必要があります。
そんな移動を必要とする場所に、イギリスの人たちは「作った美味しいビールを持っていこう!」と考えました。
ビール樽がどれだけ重くても船に運んでしまえば、インドへと持っていくことは可能です。
しかし、長い時間と天候による温暖差、これらがビールには大ダメージを与えます。
せっかく作った美味しいビールはインドに到着したときには味が劣化してしまっていたのです。
とても残念だったはず。
それでもビールが好きなイギリスの人たちは諦めませんでした。
どうすればインドでも美味しいビールが飲めるのか考えに考えたのです。
着目したのはビールの材料の1つである「ホップ」の存在。
ホップには香りや苦味を与えるだけでなく、防腐剤としての役割もあります。
という訳で、ホップをそれはそれは大量にドバドバっと入れました。
それだけでは終わらず、次はアルコール度数に着目。
ウォッカやらウイスキーやら濃いお酒は腐らない、という話を聞いたことはあるでしょうか。
実際にアルコール度数は高ければ高いほど、味の劣化などは置いといてですが、それ自体が腐ることはなくなっていきます。
という訳で、通常のビールよりもアルコール度数をガツンと上げました。
こうして完成したビールは無事にインドまで持って行くことができるようになり、イギリス人たちのインドでも美味しいビールが飲みたいという願いが叶ったのです。
もちろんすでにお気付きではあると思いますが、そもそも持って行きたかったビールとはかなり異なるものに変化していました。
美味しいけどこれはもう別のビールだね、では名前は変えよう。
IPA誕生のお話でした。

一般的にIPAというと、苦みが強くアルコール度数が高いものですが、現在ではまた少し違う流れも出てきています。
苦味や香りは残しながら、味はスッキリにしたり、アルコール度数は下げたり。
今回の雷電はどちらかというと新しいIPAのスタイルに近い印象を受けました。
度数も通常のビールとさほど変わらないので、お気軽に試して頂ければと☆